繰延資産について、貸借対照表原則、一Dで次のように規定しています。「将来の期間に影響する特定の費用は、次期以後の期間に配分して処理するため、経過的に貸借対照表の資産の部に記載することができる。」
繰延資産は、計算擬制的な資産ともいわれます。
★繰延資産の具体例
- 創立費(償却期間5年)
- 開業費(償却期間5年)
- 開発費(償却期間5年)
- 株式交付費(償却期間3年)
- 社債発行費(社債の償還期間内)
将来の期間に影響する特定の費用とは
将来の期間に影響する特定の費用とは、既に対価の支払いが完了し、又は、支払い義務が確定し、これに対する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用をいいます。簡単にいうと、今年払った費用ではあるが、来年以降にも効用を得ることができるであろう費用をいいます。
計算擬制的な資産とは
繰延資産はなぜ計算擬制的な資産といわれるのでしょうか。これは、繰延資産の内容をみると分かると思います。例えば、繰延資産のひとつである開業費を見てみましょう。開業費は会社を起業するために要した費用です。ここで重要なのは、費用であるということです。資産ではなく費用の繰り延べなのです。繰延資産は、資産という名前が付きますが、資産ではありません。当期に発生した費用ではあるが、効果が時期以降にも効用を得ることができるため、経過的に貸借対照表に計上した費用なのです。開業費は、開業した年に発生しますが、その開業による利益は、会社が存続する限り発生します。ですので、開業した年に費用として計上するのではなく、計算上資産として計上し、効果の及ぶ期間にわたって費用化されます(実際には、償却年数が決まっています。)。計算上、仕方がなく資産計上されるため、計算擬制的な資産といわれるのです。
費用が繰り延べられる理由
では、なぜこのように費用が繰り延べられるのでしょうか?これは、利益を算定する時の考え方として費用収益対応の原則というものがあるからです。費用収益対応の原則とは、期間利益は収益とそれに対応する費用によって計算すべきことを要請する原則のことをいいます。原則として実現主義の原則に基づいて収益を認識(期間収益)し、発生主義の原則に基づいて認識した費用のうち、当期の収益に対応するもののみを当期の費用(期間費用)として認識し、期間収益と期間費用の差額をもって当期の利益を計算する原則を費用収益対応の原則といいます。つまり、当期の費用は収益に対応したものしか計上してはならないのです。そのため開業費は費用を支出した年に全額を費用とすることができず、収益に対応した部分しか費用計上することができず、費用計上できなかった部分を計算上、資産として貸借対照表に計上するのです。 繰延資産は本当に費用と収益が対応しているのか?