損益計算書ですべての費用を計上しない理由

当期に仕入れた商品のうち、当期売れ残ってしまった場合には、当期の費用に計上することができません。以下の理由などにより、当期の費用として認識していません。このページは、どうしてすべての費用を計上しないのかを説明していますが、販売士検定試験ではここまで詳しいところまで出題されないので興味がある人だけ読んでください。質問が多い項目で、納得のいかない方を対象とした参考ページです。あくまでも参考レベルです。

損益計算書原則

損益計算書原則、一

損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用を記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。」

このように損益計算書原則、一において、収益はすべて計上するが、費用は収益に対応するものに限るとしています。収益に対応する費用とは、収益を得るために使った費用であることをいいます。例えば、当期の売上げた商品の仕入原価や配送料などは当期の収益に対応していますが、翌期に売上げる商品の仕入原価は、当期の収益に対応しておらず当期の費用とはなりません。

費用収益対応の原則

費用収益対応の原則

期間利益は、収益とそれに対応する費用によって計算すべきことを要請する原則を費用収益対応の原則といいます。つまり、原則として実現主義の原則に基づいて収益を認識(期間収益)し、発生主義の原則に基づいて認識した費用のうち、当期の収益に対応するもののみを当期の費用(期間費用)として認識し、期間収益と期間費用の差額をもって当期の利益を計算する原則を費用収益対応の原則といいます。

このように期間利益を計算するために、当期の収益に対応する費用のみを期間費用として認識することができます。つまり、翌期の収益に対応する費用は、当期の費用として計上することができません。

補足

実現主義と発生主義

実現主義とは
実現主義とは、収益を実現した時点で認識することをいいます。この実現の要件は、財貨又は用役の移転及びそれに対する現金又は現金等価物の取得です。つまり、何かを販売し、それに対してお金やお金に準ずるもの(例えば商品券など)を受け取ることを実現といいます。このように通常、財貨又は用役の移転及びそれに対する現金又は現金等価物の取得は、販売されたときに満たされるため、実現主義は販売基準として適用されます。
・実現主義が採用される理由
制度会計上、利益については処分可能性を考慮しなければならず、販売によって収益とそれからもたらされる利益に貨幣性資産の裏づけが得られるため実現主義が採用されている。つまり、未実現の売上を計上すると、それに伴って未実現の利益(処分不可能利益)が計上されてしまうことになる。もし、この処分不可能利益を配当等により分配し、その後、売上が実現しなければ会社は倒産してしまうことになる。実現主義を採用することにより、計算された利益に処分可能性を有することになる。また、一般的に販売の事実は、後日取り消されることない確定性を有していること、この販売によって、収益として計上しうる額が客観的かつ明確になることも実現主義が採用される根拠として挙げられます。
発生主義とは、
発生主義とは、費用をその発生の事実に基づいて認識することをいいます。この発生とは、経済価値の費消事実の発生と経済価値の費消原因事実の発生をいいます。
・発生主義が採用される理由
費用と収益を対応させるため、つまり、適正な期間損益計算を行うためです。
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