減損処理とは 減損会計導入の背景と臨時償却との違いなどを解説

固定資産の減損とは、資産の収益性が低下したことにより投資額の回収が見込めなくなった状態のことをいいます。この収益性の低下を帳簿価額に反映させる処理を減損処理といいます。

減損会計導入の背景

わが国では一部の金融商品を除き、資産評価について取得原価主義を採用していることから固定資産については、取得した時の価額をもって貸借対照表価額としています。しかし、取得原価主義には資産の時価下落により、帳簿価額と時価とがかけ離れてしまう短所があります。特にバブル期に購入した土地などの固定資産についてはバブル崩壊後、急激に時価が下落しました。ただし、取得原価主義により帳簿価額はバブル取得時の高い価額のまま計上されることになります。この状態では投資家が適切な投資判断を行うことができません。そこで考えられたのが減損会計です。

投資額の回収が見込めなくなった場合とは

固定資産の減損にある「投資額の回収が見込めなくなった場合」とは、減損の兆候がある資産について、割引前将来キャッシュフローの総額が当該資産の帳簿価額を下回る場合をいいます。

減損損失額の測定方法

投資額の回収が見込めなくなった資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで引き下げる。つまり、帳簿価額-回収可能価額=減損損失額ということになる。

財務諸表上の表示

原則:直接控除方式

直接控除方式とは、減損処理前の取得価額から減損損失を直接控除して、その控除後の金額を取得価額とする方法

例)取得原価10,000千円 減損損失6,000千円

BSの表示 固定資産 4,000千円

PLの表示 特別損失 減損損失 6,000千円

例外:間接控除方式

減損損失累計額を別表示し、間接的に表示する方法<BR> 例)取得原価10,000千円 減損損失6,000千円

BSの表示 固定資産 10,000千円 減損損失累計額  6,000千円

PLの表示 特別損失 減損損失 6,000千円

減損処理と混合しやすい臨時償却

減損処理と似ている処理として臨時償却という処理があります。受験生の多くが混合していますが両者は全く別処理ですので注意してください。試験でも両者の相違点が論点になる可能性があります。臨時償却とは、固定資産の減価償却計算をするにあたって予め予見することができなかった事情により耐用年数や残存価額を修正する必要が生じた場合に行う処理であり、減価償却累計額の修正です。減損処理は、取得原価主義の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額であるため、臨時償却とは異なります。

簡単に説明すると、臨時償却は減価償却計算が間違っていたことの修正で、減損処理は取得原価が間違っていたことの修正です。

出題の可能性

減損処理は、過去の販売士1級の論述試験での出題歴があり、今後も選択式などで出題が予想されます。

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