減価償却が適正な期間損益計算を行うために必要であるという理由を説明します。
具体例
適正な期間損益計算とは、簡単に説明すると一定期間の損益計算を正しく行うということを言います。では、ここから具体例を挙げて説明します。
例)
- 01年 売上高 1,000万円
- 01年 売上原価 600万円
- 01年 有形固定資産取得費用 1,200万円
- 02年 売上高 1,200万円
- 02年 売上原価 900万円
- 02年 有形固定資産取得費用 0万円
- 03年 売上高 1,100万円
- 03年 売上原価 700万円
- 03年 有形固定資産取得費用 0万円
減価償却をしない場合
まず、減価償却をしない場合の損益計算を見てみます。上記例の損益計算書は次のとおりです。
01年損益計算書 | |
売上高 | 1,000 |
売上原価 | 400 |
売上総利益 | 600 |
有形固定資産取得費用 | 1,200 |
当期純損失 | -600 |
02年損益計算書 | |
売上高 | 1,200 |
売上原価 | 900 |
売上総利益 | 300 |
有形固定資産取得費用 | 0 |
当期純利益 | 300 |
03年損益計算書 | |
売上高 | 1,100 |
売上原価 | 700 |
売上総利益 | 400 |
有形固定資産取得費用 | 0 |
当期純利益 | 400 |
【01年損益計算】
減価償却をしない場合は、01年で売上総利益が600万円の黒字であるにも関わらず、有形固定資産を購入したため-600万円の赤字になってしまいました。
【02年損益計算】
02年は、300万円の黒字です。
【03年損益計算】
03年は、400万円の黒字です。
減価償却をする場合
次に減価償却をする場合の損益計算を見てみます。定額法の3年(残存価額なし)で減価償却すると上記例の損益計算書は次のようになります。減価償却費=1,200万円÷3年=400万円/年
01年損益計算書 | |
売上高 | 1,000 |
売上原価 | 400 |
売上総利益 | 600 |
減価償却費 | 400 |
当期純利益 | 200 |
02年損益計算書 | |
売上高 | 1,200 |
売上原価 | 900 |
売上総利益 | 300 |
減価償却費 | 400 |
当期純損失 | -100 |
03年損益計算書 | |
売上高 | 1,100 |
売上原価 | 700 |
売上総利益 | 400 |
減価償却費 | 400 |
当期純利益 | 0 |
【01年損益計算】
減価償却をする場合、01年は、200万円の黒字になりました。
【02年損益計算】
02年は、100万円の赤字です。
【03年損益計算】
03年は、利益は0です。
なぜ減価償却をする方が適正な期間損益計算ができるのか
有形固定資産は、通常、建物などのように1年以上の長期間にわたって使用されるために購入します。1年を超えて使用されるのに、費用を購入した年にのみ費用処理することは費用収益対応の原則からも問題があります。
減価償却をしないのであれば、1年目に大きく赤字になり、2年目3年目は黒字になります。一見すると、2年目3年目になって商売がうまくいったように見えてしまいます。実際はどうでしょうか?売上総利益は1年目が最も高くなっています。(1年目600万円、2年目300万円、3年目400万円)。売上総利益は1年目が最も良いのにも関わらず、有形固定資産を購入したために最も悪いと判断されてしまうのです。
このように判断を誤ってしまわないように、1年を超えて使用することができる資産を購入したのであれば、その年の費用は使用した部分のみにするべきであると考えるのが減価償却を行う根拠です。
ただ、一般的に使用した部分を正確に計算することはできないため、定額法や定率法といった方法によって合理的に減価償却費を見積もるのです。