不確実性プールの原理(集中貯蔵の原理)とは消費者志向の変化など外部環境の変動に備えてすべての小売店が在庫を持つよりも、卸売業者がこれらの外部環境の変化に対応できるように在庫を保有することにより、流通業界全体としての在庫リスクが減少するという原理をいいます。
なお、流通業界における卸売業の必要性の根拠とする原理(原則)はこの不確実性プールの原理のほか「取引数量最小化の原理」があります。
不確実性プールの原理(集中貯蔵の原理) 解説
不確実性プールの原理とは、先に述べたようなものですが、簡単に説明すると次の通りです。
(例)
A町における商品の売上予想について次のような条件があるとします。
- (前提1) 卸売業が存在しない
- (前提2) 消費者全体の需要合計 100個
- (前提3) 季節性の強い商品であるため注文は1回限り
- (前提4) 小売店の数 4店舗
- (前提5) 各小売店の予想売上数量 20個~30個
まずA町に卸売業者が存在しないケースを考えてみます。
卸売業が存在しないこのような状況であると、販売ロスを防止するため、各小売店は30個の商品を仕入れます。すると、このA町全体の商品在庫は、30個×4店舗=120個となります。しかし、このA町全体の消費者需要は100個です。つまり、この状況では、A町全体で20個の売れ残りが生じてしまうことになります。
次にこのA町に卸売業者が存在するケースを考えてみます。
卸売業が存在する場合では、季節性が強く製造業者が1度限りしか商品を生産しないといった状況であっても、卸売業者がA町全体の消費者の需要を満たすだけの商品在庫を保有しているため、各小売店は、売り切れによる販売機会ロスの不安がなく、最低売上予測の20個を仕入れればよいことになる。つまり、小売店全体の商品在庫は、20個×4店舗=80個となり、卸売業が存在しない場合と比較すると、120個-80個=40個の在庫コストを削減できます。
不確実性プールの原則(集中貯蔵の原理)とは、このように卸売業が存在することにより、流通コストが削減することができるという原則です。